Wednesday, December 12, 2012

仮定法が3秒で話せるようになる方法

「現実じゃなかったら時制をひとつ戻す」

はい、これで仮定法は終わりです。3秒。

未だに日本には「仮定法は英文法の中で最も難しいものの一つ」「仮定法は構文を丸暗記するしか無い」と訳の分からないことを言う英語教師が大量にいますが、はっきり言って単なる勉強不足です。

構文を丸暗記する?冗談じゃありません!!大学を受験しようと思っているような賢い日本の学生が、アメリカでは幼稚園児でも話せる構文をあれだけ勉強させられても話せるようにならないなんて異常だと思わないのでしょうか。これはどう考えても教え方が間違っているからとしか考えられません。

「現実でなかったら時制をひとつ戻す」仮定法はこれ以上でもこれ以下でもありません。受験で勉強した仮定法過去、仮定法過去完了、仮定法過去と仮定法過去完了の複合型、I wish 仮定法、if節のない仮定法などなど…あんなものは全てゴミです。全く必要のない知識と断言できます。

「現実でなかったら時制をひとつ戻す」というこのルールさえ知っていれば自由自在に仮定法を使うことができるようになるということを保証します。どういうことなのか実際に順を追って説明してみましょう。

"If I were a bird, I could fly."

「もしも私が鳥だったなら、空を飛べたのになあ」これは仮定法を教える時に必ずと言って良いほど使われる英文ですが、そもそも今のことを話しているのに何故「過去形」を用いているのでしょうか。

これを説明するにはまず「過去形」に対する我々の誤解を解く必要があります。

「過去形とは一体何でしょうか」

このように聞くと十中八九「過去を表すものです」という答えが帰ってきますがこれは厳密に言うと誤りです。過去形とは本来「何かから離れている」という距離感を表しており、それが何から離れているかで「過去」「仮定」「謙譲」3つの意味を表しているのです。

詳しく見てみましょう。

過去形の本来の意味は「離れている」

①「現在」から離れている→「過去」



「現在」から離れている、これが我々が「過去形」と言われた時に最初に思い出す「過去」です。何も難しいことないですね。

e.g.
"I was absent from school today."
「今日は学校を休みました」

②「現実」から離れている→「仮定」



図を見てみましょう。左の「もしも雨が降ったら明日の体育祭は中止だ」これはサハラ砂漠のど真ん中で言っていない限り現実的に起こりえそうなものなので仮定法ではありません

それに対して右の「もしも飴が降ったら子どもたちも喜ぶだろう」というのはどう考えても現実的には起こり得ないのですから時制を一つ戻して仮定法とします。これに関しては後で詳しく説明します。

e.g.
"If I were you, I would accept the offer."
「もしも僕が君ならその申し出を受け入れるのになあ」

③「相手」から離れている→「謙譲」



想像して下さい。飲み会の席で仲の良い友人になら隣に座って「よぉ〜!!元気だったか?」と声をかけて肩を組むこともあるでしょうが、教授相手でも同じことをするという人がいるでしょうか。そういう時は普通は教授から離れた下座に座っておとなしくしていることが多いと思います。

英語の「謙譲」表現も全くこの気持ちと全く同じです。「相手」から離れていることで「謙譲」のニュアンスを込めている、という訳です。例文を見てみましょう。

e.g.
"Would you pass me the salt?"
「塩をとって頂けませんか」

このように "Will you pass me the salt?" でも十分なのにwillの時制を一つ戻してwouldにすることでより丁寧な表現にしているのですね。

以上のことを踏まえた上で仮定法について見てみましょう。


ここまで引っ張っといてなんですが、結局は「現実じゃなかったら時制をひとつ戻す」仮定法はこれだけです。

仮定法に直すのはとっても簡単、たったのツーステップです。次の例文を考えてみましょう。

「もしも私がそこに居たら、彼を追い出すよ」

①何も考えずに英語に直す。
"If I am there, I will kick him out."

②でも実際「私」は「そこ」にはいないので事実ではない、時制を一つ戻す。
"If I was there, I would kick him out."

はい、これでおしまいです。すごく簡単でしょ?何も考えずに英語に直す、事実でないなら時制を一つ戻す。これだけです。いったい何が難しいのでしょうか。

但し、一つだけ仮定法には was を were に戻すというルールがあります。(最近はwasのままで済ませる人もいます)従って最終的には "If I were there, I would kike him out." となります。

これはまだ英語が直接法と仮定法で動詞の活用が違っていた時代の名残なのですが英文法マニア以外には余り意味のない知識だと思いますので割愛します。

とにかく、これさえマスターしてしまえば他のありとあらゆる仮定法に応用できます。

今まで「I wish 仮定法」と暗記していたものだってこの通り。

「あぁ〜あ、お金持ちだったらいいのになぁ」
"I wish I am a millionaire."
↓でも実際私はお金持ちじゃないので時制を一つ戻して…
"I wish I were a millionaire."

何故か「ifのない仮定法」として別物として暗記させられていたwithやwithoutを用いたものだってこの通り。(そもそも if は条件を表しているだけで「仮定」は表していないのです)

「空気がなかったら我々は生きていけない」
"Without oxygen, we cannot live."
↓でも実際に地球に空気があるので時制を一つ戻して…
"Without oxygen, we couldn't live."

かの悪名高き仮定法過去と仮定法過去完了の複合型だってこんなに簡単。

「彼女があの事故で死んでいなかったら、来月に20歳になっていたのに」
"If she wasn't killed in that accident, she will be twenty next month."
↓でも実際には彼女は死んでしまったので時制を一つ戻して…
"If she hadn't been killed in that accident, she would be twenty next month."

ね、すごく簡単でしょ!!


日本では何故か「英文法を勉強しても英語が話せるようにならない、必要なのは英会話だ!!」といった風潮が非常に強く、巷には大量の英会話スクールが溢れています。しかしはっきり言って未だかつて英文法はできるけれど英語が話せないという人に会ったことがありません。

「英文法を勉強したのに英語を話せない!!」と声高に叫んでいる人は大抵の場合英文法を勉強したつもりになっているだけと言っても過言ではありません。これは何も個人の問題だけではなく、英文を分析してそれを分類しただけの辞書的な知見の集まりを「英文法」というレッテルを貼って生徒に教えている日本の英語教育にも問題があります。

本来英語のネイティブスピーカーがそのような分類を覚えて英語を話している筈がありません。ネイティブスピーカーの頭の中には英文を作り出す為の何らかの「ルール」が備わっている筈です。真の英文法学習とはそのルールの学習であるべきではないでしょうか。

今まで中高6年間或いはそれ以上の長きに渡り辞書的な分類の丸暗記をしても英語を話せるようにならなかったという方は、手始めに我が師匠(と勝手に崇めている)大西泰斗先生の書かれた英文法書「一億人の英文法」を読んでみてはいかがでしょうか。

豆腐の上に高層ビルを建てることはできない、英会話教室にいって会話の練習をする前にその土台となる英文法をこれを機にしっかりと学んでみることをおすすめします。



※追記:文法オタクの皆さんへ。文中の「ルール」とは生成文法等特定のものを指したものではないのであんまり突っ込まないでNE☆

2 comments:

  1. "If you were my English Teacher, I can speak English fluently."
    ↓でも実際には、僕のカスみたいな語学の才能からして「流暢ww」になることは自明なので、
    "If you had been my English Teacher, I could speak English fluently."
    合ってる?

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    1. 英文は正しいけど考え方が少し違うかな??
      仮定法っていうのは設定する条件がそもそも現実ではないっていうことを表しているので、件の例文ならば "If you were my English teacher, ..." の時点で「私は貴方の英語の先生ではないから」時制を一つ戻す、と考えるべきだと思いますよ〜(๑•́ ₃ •̀๑)

      結局、仮定法は「もしAならB、まあAじゃないからBじゃないんだけどね」という意味を表しているのだと理解すればいいでしょうね。

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