Saturday, May 26, 2012

医学生が考える医療シリーズ「第1回:ホメオパシーは再び患者を殺す」その3


「第1回:ホメオパシーは再び患者を殺す」その1を読む。
「第1回:ホメオパシーは再び患者を殺す」その2を読む。

さて、ついに統計学の力を使ってホメオパシーで使われるレメディが単なる砂糖玉であるということが明らかになりました。

ここまで来て疑問に思った方もいらっしゃると思います。題名を見てみましょう。「ホメオパシーは再び患者を殺す」穏やかではありませんね。何故単なる砂糖玉が危険なのでしょうか。

実はここが一番ホメオパシーの恐ろしいところなのです。ホメオパスはしばしば「西洋医学を併用するとホメオパシーの効果がなくなる」と主張し、その1で取り上げた生後2ヶ月でなくなってしまった赤ちゃんのように患者さんを適切な治療から遠ざけます。

これだけなら自分の意志でホメオパシーを中止しちゃんと病院に連れて行くことだってできそうなものですが、巧妙なのが適切な治療を行わないで症状が悪化すると「それは一時的な好転反応で問題はない、直ぐによくなる」と言って先程の文句と併用し患者さんを少しずつ死に追いやる点です。

現に2010年、ホメオパシーに頼っていた悪性リンパ腫の女性が病院に行くのを拒み続け、とうとう緊急搬送された後入院11日目で死亡するという事件が東京で起こりました。

入院前、彼女が送った最後のメールは次のようなものでした。

「心臓が、止まりそうな痛さです。先生(ホメオパス)お願いですから来て下さい」 

これは決して特別な例ではありません。ホメオパスを育成する The Japan Royal Academy of Homeopathy のページでも、重症喘息患者さんに対して「標準治療(エビデンスレベルの高い治療)を受けてはならない、受けたら死亡する、ホメオパスに頼りなさい」というアドバイスを行なっています。どうやらホメオパシー界隈では患者さんに西洋医学を避けさせるのは業界全体で珍しいことではないようです。これについてはNATROM先生の記事を見て頂けるとよく分かると思います。

このような例はホメオパシーには限りません。今回はホメオパシーを取り上げましたが、代替医療と呼ばれるものの中には同じようなものはいくらでもあります。

次のようなセリフを聞いたら注意して下さい。


  1. 「絶対大丈夫、必ず治る」などと治療効果を確証する。
  2. 「西洋医学を使うと効果がなくなる」と言う。
  3. 体調が悪くなっても「それは一時的だから、好転反応だから」と言う。


彼らは巧妙に近づきます。とても優しく近づいてきます。思いやりにあふれているでしょう。しかし、あなたの身体にはスペアなどありません。一度失ってしまえば永久に戻らないのです。彼らの言うことはいかにもバラ色の未来のように聞こえるでしょう。ですがお辛いでしょうがまずは現実を受け入れて下さい。現実を受け入れ病院に来て下さったら我々も全力を尽くしてあなたが元気になるように、また元の生活に戻れるようにサポートします。

この記事を読んでこの問題について考える機会を少しでも作ることができたのなら、これほど嬉しいことはありません。

*冒頭にも書きましたがこの記事はホメオパスの方々を説得するために書いたものではなく、ホメオパシーとは何なのか聞いたこともない人たちに実情を知ってもらう為に書きました。従って「私には効いた」などの体験談等のコメントはまことに失礼ですがお断り致します。ホメオパシーに対する統計評価の解釈等に問題がある場合はどうぞ積極的にご連絡頂けると助かります。


尚、ホメオパシーが自閉症などの疾患に効くという論文をぼくも読みましたが、あれは診療時間などの交絡因子の影響が排除しきれていないのではと考えています。ホメオパスの人たちの傾聴姿勢などには我々も学ぶものがあるとは思いますが、効果がないものに高いお金を払わせ、必要な治療から遠ざける行為には義憤を感じてしまいます。

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